サボテンマニア

サボテン等、植物のことを中心に書いていくブログ。好きなサボテンの種類はウチワサボテン。

ダン・トーレ『サボテンの文化誌』(原書房、2021年)

 

著者は相当なサボテン好きと思われる。

植物としてのサボテンの形態、人間がサボテンをどう利用してきたか、キャラクターとしてのサボテン、食用としてのサボテン等、取り上げられているテーマは多岐に渡り、色々な角度からサボテンについて語られている。特にサボテン好きは持っておいて損のない一冊と感じた。

 

特に印象にのこったのは「サボテンを食べる」という章が設けられており、27ページに渡って食用のサボテンについて語られている。ウチワサボテンの「葉」や果実は食べられるとして一般的にも有名だが、ウチワサボテンでも、その花を食べたり、種を挽いて食べるという用途がある。

ウチワサボテン以外の種類のサボテンも食べられているという。例えば、柱サボテンの一種にはとても美味しい実がなる種類もあるとのこと。また、原始的なサボテンで木の葉サボテンという一見すると普通の樹木のようなサボテンがあるが、その一種、杢キリンの葉はほうれん草のようにして食べられているという。

 

是非、杢キリンは入手したら、その葉を食べてみたいと思った。

【サボテン】冬のおきなうちわ

22年1月初旬に園芸店で「おきなうちわ」を購入。

 

学名:Austrocylindropuntia vestita

原産地:アルゼンチン・ボリビア

学名の由来はAustro-が"南"の意味。cylindr-が"シリンダー"。Opuntiaが"ウチワサボテン"

北米には"Cylindropuntia属"が生息していますが、それに南が修飾する形になっています。

 

売店では温室内にあったため元気な緑色をしていました。

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店頭での様子(おきなうちわ:Austrocylindropuntia vestita)

 

自宅では家の中に置き場がなく、かといって立派な温室があるわけでも無いため簡易温室(加温無し)で屋外放置。3、4日後の様子が下の写真。倒れてきました。。

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倒れてきた"おきなうちわ"

現在、購入から約3週間後の写真。

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22年2月初旬現在

しっかり直立!色は冬のサボテンらしく赤色になりました。

 

下記ページによれば寒さは約−4℃程度までは大丈夫そう。

ただこういった高地に自生するサボテンは冬はOKでも夏の湿度にはあまり強くなさそうですね。風通しをよくして何とか夏越しさせてやりたいです。

worldofsucculents.com

【サボテン】ダイソー産 金鯱の成長点

我が家の金鯱(きんしゃち)。ダイソーで21年9月に購入。

連日、氷点下のマイナスですが、成長点から出たばかりの刺がうっすら赤色に色づいています。

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金鯱(Echinocactus grusonii)

金鯱は日本ではサボテンの王様として、大きなものが植物園でも見られますが、100均やホームセンターで売っている個体は見た目も違います。大きな個体は英語では"Barrel Cactus(樽サボテン)"と言われますが、小さいものは金平糖のような形状です。

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植物園温室の金鯱

原産地はメキシコのケレタロ州など。原産地は標高も高く夜間は気温も下がるため、それなりの氷点下にも耐えられるようですが、我が家の金鯱は夜は玄関に取り込んでいます。近所の家の金鯱は人間のコブシ大のサイズで年中出しっぱなしですが、我が家のものはまだ小さいので今年は念の為。

 

なお、出たばかりの刺が赤いのはフェロカクタス属も同様。フェロカクタス属も北米に生息し、近縁種のようです。

村主康瑞『アンデスのサボテン Native Place in Andes』(家の光協会、2001年)

著者が南米のサボテン自生地を訪れて、現地でしか見ることができないサボテンの生育の様子を撮影した写真集。 

 

著作権の関係で写真は載せられないですが、野生のギムノカリキウム属は結構、周囲に他の雑草が生えている環境で生育しているんですね。直射日光に当てると日焼けするというのもこういった自生地での環境によるのでしょうか。 

 

巻末には「南米産のサボテンの作り方」というページもあります。著者は小学生の頃からサボテンに親しみ、01年当時で40年近い経験から書かれた育成のポイントが記載されています。 

 

海王丸などの「デネダーツム系」(記載そのまま)のポイント以下。 

① 水分を十分に与えることです。 

② 日光はやわらかい光が、半日あればよい 

③ 夏は涼しくしてやることです 

④ 植替えを、こまめにしてやることです

夏は特に上記②、③を気にする必要がありそうですね。 

 

その他、ギムノカリキウム強刺系、コピアポア、メロカクタス、ユーベルマニアの育成についても記載があります。 

 

 

 

【サボテン】海王丸(ギムノカリキウム属)は水が好き

サボテンブログと銘打っておきながら4記事目にして、直接的には初めてのサボテン関連記事です。

 

我が家のサボテンの中でお気に入りの一つ。海王丸(かいおうまる)です。

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海王丸(Gymnocalycium denudatum‘KAIOMARU’ )

21年9月末にホームセンターで購入。購入時は固まる砂に植えられており、シワシワになっていました(長い間売り場にあった?)。

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購入して2週間目くらい。右奥が海王丸。水を吸っていない。

サボテンは太陽と乾燥が好きだという思い込みから、炎天下にさらしてしまい、ホームセンターで消耗した状態から追い打ちをかける結果となってしまいました。写真は取り忘れましたが、かなり日焼けも。

 

海王丸等のギムノカリキウム属は所謂サボテンのイメージとは異なり、それほど強い光を必要としないようです。

 

現在は冬の太陽の光くらいがちょうど良いのか調子を取り戻し、水も吸ってプクッと可愛らしい姿になりました(一番上の写真)。

 

春になったらしっかり遮光しようと思います。

 

 

L・H・ベイリー著、編集部訳『植物学名入門 - 植物の名前のつけかた』(八坂書房、2017年)

 

サボテンの名前を調べており学名の付け方に興味がわいたので手に取った。「あとがき」によれば本書の原著が記されたのは1933年。ベイリーは日本でも戦前の農学・園芸学関係者に多大な影響を与えた、とのこと。非常に骨太な本ですね。 

 

面白かった部分。 

“学名”といったら、リンネが思い浮かぶ人が多いと思うが、彼が所謂、「二名法」を考案するまでは、植物の名前を記載するのに非常に苦労していたということ。 

例えば、カーネションは「Dianthus floribus solitariis, squamis calycinins subovatis brevissimis, corollis crenatis」[単生花をつけ、短いやや卵型の萼片と、円鋸歯状の花冠をもつDianthus]。リンネはこれをDiathus Caryophyllus命名 

 

学名はラテン語なので理解が難しいと思っていたが、リンネ以前と比べたら今は随分と簡単。やはり簡潔で分かりやすいのは大事ですね。その後の学問の発展はこういったシンプルなシステムが前提だったと感じました。 

 

なお「あとがき」で紹介されていた文献。 

豊国秀夫『植物学ラテン語辞典』(至文館、1987年) 

Amazonで調べたら221月現在の価格が約13,000円。やはり学術書は高額。 

どうしても学名の意味が知りたい人はどうでしょうか。 

CAM型光合成とは

そもそも光合成とは、空気中から二酸化炭素、根などから水を取り込み、光エネルギーを活用して、有機物を作り出すこと。植物は生成した有機物を利用して成長していく。

多くの植物は昼間に気孔を開いて、二酸化炭素を取り込み光合成をする。ただし、この場合、開いた気孔から水分が失われる。 

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気孔の開閉

そこでサボテンのような乾燥した環境に生息する植物は、暑い昼間の間は気孔を閉じておき、涼しくなった夜に気孔を開く。夜の暗い間は光が無く、そのまま取り込んだ二酸化炭素光合成できないので、一旦、リンゴ酸などの有機物に変化させて体内に蓄えておく。蓄えた有機物を昼間、太陽が昇ったら二酸化炭素に戻して光合成をする。これをCAM型光合成という。 

 

ちなみにある種のサボテンは食べることができますが、基本的にサボテンには酸味があります。そして、その酸味は朝方に収穫した方が強いらしいです。これは夜間に生成したリンゴ酸が朝の方が酸味としてたくさん残っており、昼間に光合成する中でリンゴ酸が消費されていき、酸味が薄くなってくるというわけです。 

 

【参考文献】 

ガイ・バーター著、北綾子訳『英国王立園芸協会とたのしむ 植物のふしぎ』(河出書房新社、2018年) 

CAM 植物の気孔開閉 | みんなのひろば | 日本植物生理学会